シンク×アリエッタ
毎日が愛おしい光でいっぱいでした。ぽっかりと空いたはずの胸の奥のちくちくと痛むところにふたをしてしまえさえしたならば、陽だまりの中で無垢にまどろむ子猫の顔をしてあなたにすりよることができたのです。はたしてあなたは気づいていたのでしょうか。ずるい顔をして甘えるわたしに。むっとするくらい甘いチョコレートをかぶって偽ってすべてを手のひらに握りこんであなたから遠ざけて笑っていたわたしに。(忘れたわけではないの)(忘れられたはずがないの)それでもまるで興味のないそぶりでいつもわたしの隣にいてくれたあなたは、きっと誰より優しいひとでした。
あなたの背中の裏側にこれっぽちも愛を向けていなかったと言えば嘘になる。てをみっつたたいて、ぱちん。そうやって簡単にすべてを夜空と一緒に朝のひかりに溶かしてしまえたらどんなに良かったでしょう。(幾ら落ちる星に願っても燃え尽きたがらくたに力なんてあるわけがなくて)(むだだと理解しながらもわかりたくなくて毎晩まいばん両のてのひらを握り合わせて)泣きながら目を覚ましてもつめたい世界は変わらずわたしをみつめているのです。神さまも天使も天国も地獄も草も花もおふとんもそっぽをむくの。わたしの名前をよんでくれるのはやっぱりあなたしかいなくて。あなただけで。
ああだけど。がらくたなのは星じゃなくてたぶん、わたしの方だったのかな。なりそこないのにんげんのかたちをしたなにかが神さまの瞳にとまるはずもない。祈りが届くはずもない。(それはあなたも同じだった)それでもきっとわたしたちは欲しかった。だから求めた。落っこちてひび割れて粉々の欠片になってしまった硝子玉を必死でもう一度くみ上げる姿はなんて愚かしく、哀しいの。
あなたの胸に顔をうずめればさっきふたりで飲んだばかりのココアのかおりがした。「はなれなよ、うざったい」でもあなたは無理やりにわたしを引き離そうとはしないのです「いや、です!」「はあ?」ぎゅう。もっともっと力を込めて、あなたがわたしだけのものになればいい。ひとりぼっちを怖がるばかりにひとりぼっちになってしまわないように。埋められない場所なら埋まらなくたっていいんだよって、空っぽの笑顔で手をつなげるように。
かなしいふたり
(忘れてしまえない誰かの陰におびえながら、わたしはあなたにキスをした)
130307
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