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※ほんのり気持ちが悪い 剥き出しの目玉がぎょろりとこちらを見下ろしていた。充血して赤くなったその目玉はもといた眼窩から転がり落ちて、ひとつきりになった今でも静かにリチアをみつめている。ひとつだけではない。数えきれないほど大量のその目玉だちにつがいはひとつもなく、どれも片割れを欠けさせて、ひとりになった孤独を絶望をかなしみを、物言わぬその視線に込めてリチアを無言のうちに見つめているのである。 優しい眠りにつこうと目を閉じたその裏側に。雲一つない気持ちの良いお天気だと見上げたその空に。愛おしいと緩めた目元で見やった大切なひとのその顔に。目玉は、唐突に、一斉に、そのあるはずのないまぶたを開くのだ。 安息などお前には必要のないものだと。むしろ慟哭のうちに息絶えてしかるべきだと。飽くことのない懺悔を、後悔を、飢餓を、目玉たちはリチアに希求する。当然だ。彼らの命と、先に待っていたはずの幸福を、リチアはこの手で葬り去ったのだから。 「リチア? 俺の顔になんかついてるか?」 一度めを閉じて、そうっと息を吸い込んだ。ふたたびまぶたを上げたときには、ヒスイの顔面を食い破るように咲いていた眼球たちは消え失せて、心配そうに眉を下げる優しい青年の表情だけがそこにあった。 「いいえ、なんでもありません」 そうかと、ほっとしたようにヒスイが笑う。 リチアのちっぽけで無価値な命ひとつで、今まで犠牲にしてきた人々が納得してくれるなんて短絡的な考えは毛頭ないけれど、それでももうすぐ、すべては終わるはずだから。それまでもう少し――もう少しだけ、あなたの笑顔が見れたなら。 「行きましょう。シングたちを待たせてしまいましたね」 「ああ」 なんとはなしにヒスイの右手がリチアの手を取って歩き出す。なんて温かいんだろう。合わない歩幅に少しだけヒスイの後ろに続くかたちになりながら、リチアは前を行く大きな背中に小さく微笑んで。 ぎょろりとうごめく無数の目玉が咎めるように、リチアの左腕でまぶたを開いた。 |
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***** どうしても幸せになりきれない少女の話 14/06/15 title:まばたき |