※フライング・捏造妄想・死ネタ
ミクリオ×エドナ
スレイから奪い取った儀礼剣は僕には重く、振り回されるように剣を振るう姿は自分でも無様だと思った。身軽なエドナにとって見切るのはあまりに容易いことだろう。けれど、他にどうすればいいのかわからなかった。エドナを心底憎んでいるわけじゃない。でも、エドナは僕にしか殺せない。
なぜエドナは裏切ったのか――と問えば答えは明白で、彼女が心酔する兄のために他ならない。戯れるように剣を交えるこの間にエドナが僕を見てくれたなら。兄でなく、僕ら仲間の存在に少しでも心を痛めてくれたなら。そんな都合の良い夢に縋るように、僕はスレイの剣を振り上げて。
ぐず、と。
豪奢な金細工が施された柄から伝わったのは、そんな、ひとを抉る、感触、だった。
「――なん、」
僕は目を見開いていた。すぐそこにエドナの小さな体躯があった。
「で」
奥の声が、くちびるがふるえていた。わなないていた。エドナは眉をひそめ、わずかに微笑み――血を吐いた。僕の手から力が抜ける。ふらり、一歩後ずさる。僕の手から離れた美しい一振りの剣はしかし地に落ちることはなかった。それは、エドナの身体を貫いていたから。
「なんで……どうして」
避けられないはずがなかった。むしろ大きな隙を突いて、彼女の天術にミクリオが膝を折っていた可能性の方が高かった。
ぐらりと、エドナが傾ぐ。手を伸ばし彼女を受け止めたのは無意識だった。てのひらから伝わるエドナの脈は速く、エドナの白いワンピースは今やぐっしょりと鮮血に染まっていた。あまりに鮮やかな赤に眩暈がする。
「……ありえない。屈辱」
そう嗤うエドナの唇も、真っ赤で。
ありえないと叫びたいのは僕の方だ。
「どうして! どうしてエドナっ――」
「なんで、なんて、そんなのワタシが聞きたい、わよ」
苦しげな呼吸と一緒に言葉を吐き出すように、エドナは呟く。
「しくじっちゃったんだから、しょうがない、でしょ」
嘘だ。そんなの嘘だ。エドナ。きみは。
「ミクリオ」
血に染まったエドナの指が僕の頬をなぞった。
「ワタシね、」
誰かをからかうときそうするように、エドナはいたずらな笑みをくちびるにそっと刷いて。
「あんたのこと、ずっと、大嫌い、だった」
眦から一粒、透明なしずくをこぼして、エドナは静かにまぶたをおろした。
(つぶやきまとめ)