カーテンコール/ガイナタ
ガイが少しの陰りもなく幸福だったと断言できるのは、姉上と過ごした幼かったあの日々だけだ。それも姉上の死ともに失われてしまったけれど、悲観も絶望も今の自分には遠い存在だと、照れて笑うナタリアの手を取ってガイは小さくはにかんだ。悲劇的な幕引きのあとに待つのは、幸せなカーテンコール。


本当、だったり?/アルエリ
すきです。そう零された言葉の意味がうまく飲み込めなかった。まつ毛が触れるくらいの距離でエリーゼはくちびるを引き結び、揺れる瞳でこちらを見つめる。「……今度はなんの冗談だ?」困惑しつつ返した瞬間ばか!と声を荒げた少女の瞳に、みるみる涙が浮かび始める。まさか。
まさか本当、だったり?


君とだからできる/ヒスリチ
永遠にも思えるほどに長い、とても長い時間を、たったひとつの目的のために生きてきた。怖くないといえば嘘になる。寂寞に襲われる夜もある。それでも大切なひとたちを――大切なひとをこの手で守れるのなら、迷いはなかった。「ありがとう」最後の朝、隣で眠る青年に微笑み、リチアはそうささやいた。


一行の空白/ゼロコレ
なかなかゼロスに会えなくて寂しさを持て余していたある日、手紙を書こうと思い立った。春が香る菫色の便箋に他愛のない近況を一生懸命に綴っていると便箋はすぐにいっぱいになって、気づけば残されているのはたったの一行。あいたい。そう書いてしまう前に、コレットはペンを置いてため息を吐いた。


無条件降伏/ゼロコレ
あまりにきれいな彼女を厭わしく感じているのは本当だ。だけど今日も彼女は太陽のにおいがする洗い立ての笑顔を浮かべて明るい声でこの名を呼んで、そうしてこの手を優しくとってみせるのだ。無意識の内に彼女の手を握り返してしまってから、ゼロスはいつも苦笑する。ああやっぱりきみにはかなわない。


来世でもよろしく/創作
一度開けば際限なく毒を吐き続ける彼の薄い唇が、今だけは閉じていた。お互い地面に横になってばかみたいに晴れた空を見上げて、どちらのものかわからない荒い呼吸と視界にちらつく赤い液体に気づかないふりをして。「ま、来世でもよろしく」いつもと変わらぬ彼の軽口に、わたしは泣き笑いで頷いた。


境界線のひきかた/創作
すきだよ。そんな短いきみの言葉はいとも簡単に、僕が必死で積み上げてきたすべてを瓦解させた。目の前で崩れていくそれらを呆然と見つめる僕へと向かってきみは一歩を踏み出した。あなたがすき。もう一度、泣きそうな声でそうささやくきみのせいで、僕は忘れてしまったのだ。正しい境界線の引き方を。